2005年「987型ボクスター」のクーペモデルとして誕生した「 ケイマン」。ミッドシップエンジンを搭載し前後に重量物がないため、車両運動性能に優れています。初代より数回のマイナーチェンジを繰り返し、2013年に2代目981型「ケイマン」を発売。
981型後期「718ケイマン」では水平対向4気筒エンジンが搭載された、ベーシックモデル(最高出力300psの2.0ℓ)と上位モデル(最高出力350psの2.5ℓ)の2つのタイプが用意されています。
主なグレードケイマン・ケイマンS・981型より3.4ℓケイマンGTS・3.8ℓ6速MTのケイマンGT4があり、ポルシェデザインエディション1(世界限定777台・日本限定15台)などの特別限定車も発売されました。
ミッドシップエンジンで走りも軽快なケイマン。
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2005年に初代ケイマンSがリリースされた直後、とあるテストドライバーから「大丈夫なのかな・・・」と心配されたポルシェ。
実はデビューを目前にテストを繰り返す初代ケイマンSのタイムを計ってみると、明らかに911カレラを上回っていたのだという。
「ケイマンが代表格911のお株を奪ってしまうのではないか?」
それほどまでにミッドシップでより軽いこの新参ケイマンの能力は高かった。実際996カレラの3.4リッターは300PS・最高速280km/hに対しケイマンSは295PS・最高速275km/h。意図的に序列をキープしたという形跡が感じられる。
マーケティング能力に長けているポルシェがいくら身内であっても長きに渡って築き上げた911の名声を明け渡すような事態は考えられず、911を「さらなる高みに身を置くスーパースポーツカーへと成長させる」という戦略であるはず。
それは996型では1000万円を下回っていた911カレラのスターティング・プライスが、今や1145万円からになっているという事実からも納得がいく。従来型から100mmのホイールベース延長が行われ、Sグレードでは20インチの大径ホイールを標準とする現在の911カレラは「歴代モデルの中でも比類なく“高そうに見える911”」そのもの。 今後はケイマンを「かつての911カレラのポジションを担う存在」へとの思惑が感じられる。
981型になり、ウインドシールド下端中央が従来より100mmほど前出しされた一方で、Aピラーは手前に引かれ、ドアミラー周辺の抜けもよいので、運転視界がスッキリ開けているのはボクスター同様の美点。
後方視界はルームミラー越しでも振り向いた際でもケイマンにアドバンテージがあるのは、リアウインドー面積の大きさとシート背後の“壁”の高さが、ボクスターとは異なるため。特に、バルクヘッドが非常に高く、振り向き視界が絶望的なボクスターに対して、そこが「抜けるように見える」ケイマンでは、バック走行が遥かに易しい。
前後にラゲッジスペースを備えるため、「2シーターとしては例外的に大容量の荷物が積める」のは従来型から受け継いだミッドシップのポルシェ車ならではの特長。さらにハッチバックのケイマンの場合、エンジンカバー上にも相当量の積載が可能で、ボクスター以上の実用性をもつと言える。
981型に進化し2.9リッターから2.7リッターへと“ダウンサイジング”されたベースモデルと、従来同様3.4リッター・エンジンを搭載する「S」グレード。
オプション全部載せ状態のSグレードのPDK仕様車はニュルブルクリンクを7分55秒で周回し、従来型よりも11秒短縮されたそのタイムは、同じく3.4リッター・エンジンを搭載する991型カレラよりも「3秒速い」と報告されている。
フロント廻りを中心に軽量なアルミニウム材を採用した効果もあり、1,300㎏強に収まった車両重量に対して最高325PSを発するエンジンを組み合わせた結果が「遅い」はずもなく、その加速感は0-100km/hが5秒そこそこ、最高速も280km/hをオーバーというカタログ・データをすんなり実感できる。
動力性能が文句ナシというケイマンだが、“走り”のハイライトはそのフットワークの仕上がりにこそ代表をされる。
オプションの「PASM」に加え「より高い運動性能を目指して、ボクスターより定数の高いサスペンション・スプリングを採用」というにも関わらず、明らかにそれを上まわる快適さが実現されていた点には、「ボクスター比で2倍以上」とされるねじり剛性の高さも大いに効いている。
また、ハンドリングの感覚もノーズの動きは軽やかでありながらそこに無駄な動きが無いので安心感が高い。
路面とのコンタクト感は濃密に伝えてくれる一方で、キックバックやワンダリングといった“雑音”はしっかりカットする電動式パワーステアリングの仕上がりも秀逸。結果、まさに「ドライビングが上達したような感覚」を味わせてくれる。
718ケイマンはこれまでのエンジンとそんなに大きな違いを感じないが、6気筒時代のザワザワした金属質のサウンドは影をひそめ、かわりに低い排気音が耳につくようになった。旧型ボクスターの場合、オープンでの走行時にはメタリックなエンジン音がコックピットに逆流してきて、たしかに以前ほど耳で楽しませるエンジンではなくなった。
だが、718の新型フラットフォーは総論として少しもポルシェらしさを失っていない。これがポルシェのエンジンじゃなくてなんなの? というポルシェっぽさはまったくもって健在である。
ポルシェスポーツカーらしさとは何か。それは単に水平対向エンジンであることでも、6気筒であることでもない、パワートレインや足まわりやステアリングやブレーキなど、クルマ全体から伝わる「一体感」にある。
718ではそのことをあらためて感じることができる。
ポルシェスポーツカーのエントリーモデルとして、718ケイマンのMTは非常に魅力的。クルージング向きの快適装備に加え、シャシーに速さと安定をプラスするPASMやPTVを付け、「ケイマンS」用ホイールを装着させるくらいまでなら600万円台のオプションに収まる。
この価格クラスなのに今どき電動ドアミラーがオプション(5万5000円)ではあるが、ドアからドアまでの室内幅は軽自動車並みの130cmしかない。
コックピットがキュッとタイトで、ポルシェのなかでいちばん「ポルシェを着ている」感じが強いのもケイマンの魅力である。
【総評】
ポルシェらしい走りを体現させたその完成度は初代リリース時点の「遠慮」からもみられるように疑う余地もなく、718まで迷うことなく進化を続けている。4気筒ターボへの固定観念や懐疑心も、カラダに伝わる「ポルシェらしさ」がはるか過去のものと感じさせてくれる。
なるほどケイマンにはサーキットでのラップタイムも含めてもはや「過去の911に見劣りする部分など、どこにも存在しない」と感じることができる。